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AIボイスエージェント×電子手続きで保険DXを変える|T&Dフィナンシャル生命×スカイコム特別対談

この取り組みの陣頭指揮を執り「省力化はもちろんだが、ねらいはむしろCX改革にある」と語るT&D執行役員の賀來邦彦氏と、PDF技術で完全無人化の実現を支えた株式会社スカイコム社長の川橋郁夫が、契約業務DXの成功のカギと、その先に見える顧客と企業の新しい関わり方について語り合った。
(本文中の発言者名は敬称略)

この取り組みの陣頭指揮を執り「省力化はもちろんだが、ねらいはむしろCX改革にある」と語るT&D執行役員の賀來邦彦氏と、PDF技術で完全無人化の実現を支えた株式会社スカイコム社長の川橋郁夫が、契約業務DXの成功のカギと、その先に見える顧客と企業の新しい関わり方について語り合った。
(本記事内 敬称略)
第1章「唯一の接点」が経営課題だった

T&Dは、主に銀行や証券会社などの代理店を通じて保険商品をお届けするビジネスモデルを採用しており、お客様と直接面談等を行う営業職員はおりません。そのため、ご契約いただいたお客様と直接つながる窓口は「コンタクトセンター」の電話対応のみで、ほぼ1回きりという強い制約があります。住所変更や解約、給付金請求など、人生の重要な節目でいただくたった1回の機会に、間違いのない安心感をスピーディーにお伝えできなければ、信頼は一瞬で失われてしまう。この顧客接点をいかに強化してCXを高めるかが、長年の経営課題でした。
スカイコム 川橋それは、契約業務を抱える多くの金融機関やBtoC企業に共通する課題とも言えますね。各社とも巨大なシステムを構築してきましたが、デジタル化されているのは新規契約などの主業務が中心です。その周辺にある住所変更・名義変更・各種通知といった業務は、依然として「人」に依存したままで、手間やスピードに課題を抱えているケースが非常に多い。
さらに私たちには「2028年」というタイムリミットもありました。弊社の5年満期商品が販売好調ですが、その契約が一斉に満期を迎えるのが2028年です。満期手続きにはいくつか選択肢があり、その問い合わせを一気にいただく時に備え、現状の受電体制自体も見直す必要があると考えました。
スカイコム 川橋それは採用の問題でもありますよね。事業が成長しても人員を同じペースで増やすことはできず、人手不足が成長のボトルネックになる。多くのサービス業やバックオフィス部門が直面している構造的な問題です。
T&D 賀來その通りです。そこで私たちはこの2028年を、会社が生まれ変わるための「コンペリングイベント(変革を強制する事象)」と位置づけ、改革のトリガーを引く方向性の本格的検討を開始しました。
※ 2026年3月現在、公開情報に基づく当社調べ。
第2章AIとPDFが変えた保険手続きの姿
実は、当初から完全無人化の構想はありましたが、保険手続きは本人確認や意思確認の重要性が非常に高いため、段階的に進めるのが妥当だと考えました。そこで第一段階として、PKSHA Technology社(以下、PKSHA)のAIボイスエージェントを導入し、電話を受けて内容を判断し、コミュニケーターへの接続か自動処理かを振り分ける仕組みを作ったのです。これで一次対応はかなり効率化できました。ただ、問題はその先でした。自動受付を済ませても、書類送付ステップになると結局は社内の担当者が紙を印刷し、封入して郵送しなければなりません。
スカイコム 川橋「入口だけがデジタルで、後ろの事務処理が紙のまま」という現象ですね。本当に変えたかったのは「待たせる構造」そのものだったはずなのに、それでは真のCX改善にはなり得ません。
T&D 賀來その通りです。そこでフロー全体を見直し、完全自動化の障壁となっている「オンラインでの本人確認と契約」を突破するために出会ったのが、スカイコムの電子契約サービス『SkySign®』でした。今回のポイントは、PKSHAのAIボイスエージェントとスカイコムの電子手続きシステムを直接連携させることです。お客様からお電話をいただいたら、AIが内容を判断し、そのまま手続き用URLをSMSでスマートフォンに送信する。お客様はそこから画面上の書類に入力して送信するだけで、オペレーターが1人も介在しない完全無人化のフローが実現できると考えました。


PDFは単なる「閲覧用ファイル」と思われがちですが、実際には入力、電子署名、タイムスタンプ、改ざん検知までを行える堅牢な「業務基盤」です。PDFと『SkySign®』を組み合わせることで、スマホ上で法的効力に耐えうる厳格な真正性担保──誰が・いつ・何を記録し、改ざんされていないか──を実現できます。
T&D 賀來どうすればスマホ上で各種ルールに則った手続きを実現できるか暗中模索していた中、こちらが要求する前に「ルール上、ここの真正性担保はこうなります」と先回りの提案をしてくださったことは非常に心強かったですね。一般的な電子契約サービスは「契約書に署名する」用途に最適化されているものが多く、導入には既存の業務フローを大きく変える必要がありました。しかし私たちに必要だったのは、今の変更・受取手続きのフローのまま電子化すること。『SkySign®』はその設計が柔軟で、業務を大きく変えずにデジタル化できる点が選定の決め手でした。
第3章保険DXの取り組みを支えた「スモールスタート」の教訓
もう一点、非常に重要だと感じたのは、御社が最初から数億円を投じるような「基幹システムの大規模刷新」を目指さなかった点です。既存の資産を活かしながら、必要な部分だけをつなぐ「スモールスタート」を徹底されましたよね。
T&D 賀來ここも重要なポイントでした。どうしても「システム全体の刷新」というお話となりますと、全体最適の話になります。もちろんそれ自体は正論ですが、我々が解決したかったのは、「この特定の業務ラインを無人化したい」という局所的かつ切実な課題でもありました。
スカイコム 川橋最初から完璧なものを一気に行おうとすると、スタートしてから大量の修正や現場の混乱が発生しがちです。最近のトレンドでも、「1からすべてを作る」より「既存の汎用サービスをうまくつなぐ」というアプローチが主流になっていますね。今回、私どもが担った手続き部分の設計でも、T&D様が長年使ってきた帳票や確認プロセスをそのままデジタル化することを大事にしました。既存の帳票をPDF化し、入力項目を定義して電子手続きとして使えるようにすれば、開発コストを抑えながらスピーディーに導入できます。多くの企業には長年積み上げてきた緻密な帳票文化があり、それを全部捨てて新しい画面に作り直すのでは現場が受け入れられません。「現場の業務を大きく変えない」ということが、実はデジタルツール定着の最大の条件なんです。

私たちの場合はまず、一定条件に達すると運用がストップする外貨連動型商品について、同内容の商品へ移行することで運用を再開できる「継続プラン」への対応から取り組み、次に解約手続き、そして今回の完全無人化へと、段階的にハードルを上げていったのですが、この進め方には二つの大きなメリットがありました。一つは「社内の納得感を得やすかったこと」。慎重な社内に対して小さな成功事例を積み重ねることで安心感が生まれていきました。そしてもう一つは「現場がシステムと一緒に育っていったこと」。UIに慣れたオペレーターから「ここをこう改善したらもっと使いやすくなる」といった建設的な意見が、自発的に出てくる好循環が生まれたのです。
スカイコム 川橋小さく始めて成果を示し、現場の慣れと改善提案の循環を生む。今回のT&D様の取り組みは、まさに他社にとっても非常にお手本になるモデルケースだと思います。
第4章DXは、人が「本来の価値」を発揮できる環境をつくること
「DXや無人化はコスト削減策」と捉えられがちですが、私たちの目的はそこにありません。定型的な変更手続きや膨大な紙の通知業務をデジタルに任せる目的は、コミュニケーターを減らすことではなく、彼らが「本当に人が対応すべき、高度でエモーショナルな業務」に集中できる環境をつくることです。高齢の方や複雑な個別事情を抱えるお客様は、人間のオペレーターにじっくり話を聞いてもらいたいと感じている。定型業務を完全無人化して生まれたリソースを、そうした窓口に手厚く配置できるようになる。デジタル化を進めるほど逆に「人」の真価が引き出される——これこそが、私たちが目指すCX改革の真髄です。

定型的な案内はAIに任せ、人はより付加価値の高い業務に集中する。これからはその組み合わせ方がDXの核心になっていくと思います。コンタクトセンターは「コスト部門」ではなく、企業の「CXの起点」であり「成長エンジン」になり得るんです。
T&D 賀來今後はこの仕組みを、生前贈与の通知業務や、他の変更手続きへも展開していく計画です。例えば契約更新案内や各種通知業務など、これまで大量の紙を郵送していた業務についても、デジタル化によってお客様の利便性向上と業務効率化の両立を図っていきたいと考えています。
スカイコム 川橋『SkySign®』では、契約更新案内や料金変更通知など、宛先ごとに内容が異なる文書を一括で配信できる仕組みも提供しています。従来は印刷・封入・郵送が必要だった通知業務をデジタル化できるため、保険業界に限らず、多くの企業で活用可能性があると考えています。
「まずできるところから始める」ということです。理想の全体像を描きながらも最初の一歩は小さくていい。大規模なシステム刷新でなくても、必要な部分をつないでいくことで確実に前に進めます。
スカイコム 川橋そして大事なのは、既存の業務を無理に変えないことです。新しい仕組みを押し付けるのではなく、今の業務フローを活かしながらデジタルでつなぐ。その発想の転換が、CX向上と省人化の両立への最短ルートだと確信しています。AIとPDFという組み合わせが、業務DXの大きな壁を突き崩す——今回の取り組みは、その可能性を示したものだと思っています。



